研究コラム

母体の肥満、高脂肪食に起因する子どもの代謝機能障害をNMNが軽減

母体の肥満、高脂肪食に起因する子どもの代謝機能障害をNMNが軽減
「肥満のなりやすさ」は遺伝する!?

子どもの肥満には遺伝素因(家系)が関与していることはよく知られており、両親が肥満の場合は約70%の子どもが、片方が肥満の場合でも約40~50%の子どもが肥満になると言われています。
米国・ペンシルバニア大学が行った一卵性双生児と二卵性双生児を対象とした肥満についての研究では、一卵性のほうが二卵性よりも肥満の一致率が2倍も高いことが分かりました。この結果は、肥満が「遺伝病」の1つである可能性を示唆しています。また、幼少期の肥満は、その後代謝障害を発症しやすいとも報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3712713/

母親の肥満と子どもの代謝疾患リスクの関係とは
マウスを使用した肥満についての研究では、母親マウスの肥満は子マウスの脂肪率と肝臓トリグリセリドを増加させ、子マウスの耐糖能、肝臓NAD+レベル、クエン酸合成酵素活性を低下させることが分かっています。
これらの影響は、子どもの肥満や非アルコール性脂肪肝疾患などの代謝疾患のリスクにつながると言われています。
またこれらの影響は、離乳後の子マウスが高脂肪食を摂取することによってさらに悪化することも知られています。

実験の内容
母親の肥満は、産まれてくる子どもの代謝機能に影響を与えることが分かっています。そしてNMNには、産まれてきた子どもの代謝機能障害を軽減する可能性があることが報告されています。
この研究では、母親および子どもの高脂肪食(HFD)の摂取により発症する子どもの代謝機能障害が子どもへのNMN の短期投与によって改善効果があるのかどうかを調査しました。

実験では、母親になるマウスに一方は普通食、一方は高脂肪食(HFD)を与え、それぞれから産まれた子マウスを普通食と高脂肪食(HFD)とで計4つにグループ分けしました。さらに生後31週間後、4グループを8日間NMN注射を投与するチーム/不投与のチームに分け、屠殺前の3週間にわたり観察しました。また、生後10・29・32週目に体重と耐糖能を試験し、離乳後の高脂肪食(HFD)の短期的および長期的な影響およびNMN治療の効果を測定しました。

 

【実験から得られた結果】
■高脂肪食の母親の子どもは体重増加が大きい

生後3~30週の子マウスの体重を比較したところ、高脂肪食(HFD)を与えた子マウスは普通食のマウスよりも体重増加が大きいことが判明しました。
また、同じ高脂肪食(HFD)を与えた子マウスでも、高脂肪食(HFD)で飼育した母親マウスから産まれた子マウスのほうが普通食で飼育した母親から産まれた子マウスよりも体重増加が著しいことが観察されました。
母親の食事が生後の子どもの体重に大きな影響を与えると言えるでしょう。

■NMN投与によって子の中性脂肪の増加が抑制・耐糖能に関する評価

子マウスの生後34週目に血漿中のインスリン・中性脂肪、肝臓の中性脂肪・ミトコンドリア代謝関連遺伝子を測定したところ、わずか8日間のNMN治療によって母親の高脂肪食(HFD)および離乳後の高脂肪食(HFD)による子マウスの耐糖能障害が大幅に改善されたことが明らかになりました。
さらに、高脂肪食(HFD)で飼育された母親から産まれた子マウスの肝脂質蓄積は、NMN 治療により、普通食を与えられた子マウスで50%、高脂肪食(HFD)を与えられた子マウスでは23% 減少しました。

NMNが子どもの代謝性疾患治療の鍵に?

これらの発見は、NMNの短期投与が、母親および離乳後の過剰栄養による子どもの代謝疾患に関して有効である可能性を示唆しています。つまり、子どもの肥満は遺伝要素が強いものの、NMNの投与により改善の余地はあると言えるでしょう。
このように、NMNには肥満の遺伝を断ち切る効果や代謝改善効果が期待されています。もちろん母体・子ども共に高脂肪食を控えて子どもの肥満や代謝性疾患を未然に防ぐことが大前提ですが、万が一罹患した場合はなるべく早めにNMN治療を開始するのが得策だと思われます。

【参考】
参考論文:【Administration of Nicotinamide Mononucleotide (NMN) Reduces Metabolic Impairment in Male Mouse Offspring from Obese Mothers】
直訳:ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の投与により、肥満の母親から生まれた雄マウスの代謝障害が軽減される
雑誌名・巻号/Cells. 2020 Mar 25;9(4):791
論文URLはこちら(PubMed)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32218167/

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