研究コラム

Vol.3 老化にあらがう方法論 -老化も遺伝子発現の変化によっておこる:その①-


加齢によっても「遺伝子発現」は変化する
以前の記事でお話しした通り、生命の設計図「遺伝子DNA」は一生涯変化することはありません。そのかわり、この設計図のどのパート(どの種類のタンパク質の設計図)から、どれだけの量のタンパク質を作るか(つまり「遺伝子発現」)は、時々刻々と変化しています。
この変化によって、身体を構成しているそれぞれの細胞に含まれるタンパク質のレパートリーが変化し、その結果細胞の働きに変化がおきるのです。

遺伝子発現は年齢を重ねること(加齢)によっても徐々に変化していきます。この遺伝子発現変化により細胞の働きが変わり、身体に不調が生じることを老化とよびます。
加齢に伴う有害な遺伝子発現変化を、とどめたり元に戻したりすることはできるのでしょうか?


細胞内のミクロ火力発電所−「ミトコンドリア」
今回と次回とで、老化のひとつの例として「ミトコンドリア」の減少についてお話ししていきましょう
ミトコンドリアは、身体を作っているそれぞれの細胞の中に数十個から数百個ずつ詰め込まれている小さな粒です。詳しく調べてみると、1個のミトコンドリアは数100種類の様々なタンパク質によってできており、それぞれのタンパク質が密接に連携して、生命の根本として非常に重要な働きをしていることが分かります。

食物として取り入れた栄養素(糖分や脂肪分など)と、呼吸によって取り入れた酸素とを化学的に結びつけて、栄養素が持っているエネルギーを取り出すことがミトコンドリアの働きです。
これは、石油を燃焼させて(=酸素と化学的に結びつけて)電力エネルギーを取り出す火力発電所に例えることができます。
ミトコンドリアの数が減り、働きが悪くなった場合、細胞は慢性的な電力不足に陥った地域のように「何をするにも不便」な状態になってしまいます。


遺伝子発現の変化によるミトコンドリアの不調

ミトコンドリアの働きには、数百種類の様々なタンパク質が必要なことをお話ししました。
これらのタンパク質は遺伝子発現によって作り出されています。つまり、ミトコンドリアの不調(電力不足)の原因には、遺伝子発現の不調があると考えることができます。
(次回につづく)

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